就職や結婚を機に家を出て、自分の家庭を持った後も
実家の親きょうだいが経済的に困窮している場合は、支援する必要があります。
ただ、誰がどの程度支援すべきかは、法の定めや各人の状況により異なります。
扶養義務者の範囲と扶養のレベル
民法上、直系血族と兄弟姉妹、そして夫婦は、互いに扶養の義務があります。
直系血族とは、自分を中心にして家系図を見たときに、まっすぐ上下にいる人のこと。
直系血族のうち、
上の世代の、父母、祖父母、曾祖父母のことを「直系尊属」
下の世代の、子、孫、ひ孫のことを「直系卑属」といいます。
また、この間柄で経済的に扶養できる人がいないときは、家庭裁判所の審判により
おじ・おば、おい・めいなど三親等内の親族の間柄で、扶養義務が課されることもあります。
そして、扶養義務のレベルには「生活保持義務」と「生活扶助義務」の二種類があり
・生活保持義務:自分と同じレベルの生活が送れるように扶養する義務
・生活扶助義務:自分は自分のレベルにふさわしい生活を送った上で、余力の範囲内で扶養する義務
強制の度合いや負担の重さは、保持>扶助になります。
配偶者や未成年の子に対しては、生活保持義務が求められますが
親きょうだいに対しては、生活扶助義務でよいとされています。
扶養義務者の順位
実務上、大人同士で扶養義務が問題になるのは
老親の扶養についてきょうだいが話し合うときです。
誰が扶養するかを話し合いで決められないときは
家庭裁判所が子の収入や財産、過去の親との関係性などの事情を考慮して決めますが、
子は全員平等に、親の扶養義務があり
親と同居か、長子か否か、親と姓や戸籍が同じかなどで
親の扶養義務にきょうだい間で優先順位のないことは知っておきましょう。
また、原則として
義理の親にあたる、配偶者の親を扶養する義務はありません。
ただ、義理の親は一親等の姻族にあたり
たとえば、夫に先立たれた妻が、三親等内の親族であることを理由に
亡き夫の親との同居や介護、経済的な支援を家庭裁判所から強制されたくないときは
念のため、自分の本籍地か居住地の市区町村に「姻族関係終了届」を提出する必要があります。
この手続きに夫の親の同意は不要です。
扶養義務の履行や生活費などの贈与に関する税金
税金に関しては、
経済的援助を受ける側に資力がない場合には
扶養義務者相互間で、扶養義務を履行するために給付される金品は
所得税が非課税とされています。
また、経済的援助を受ける側に資力がある場合でも、
扶養義務者から生活費や教育費として贈与を受けた財産のうち、
通常必要と認められるものに、贈与税は課税されません。
相続税の節税対策上は、祖父母が子の生活費や孫の教育費を負担する際に
「通常必要と認められるもの」に該当するかのご相談が多いです。
通常必要とは認められないとして、贈与税の対象にならないような注意が必要です。