国籍さえ変えればOK?

相続税相談の現場から

前回のコラムでご説明した国外財産調書制度は、富裕層の方が国外に持っている「モノやカネ」を国に報告させる制度です。

日本の相続税や贈与税がかかるかどうか

日本の相続税や贈与税がかかるかどうかは、もらった「モノ」ともらった「ヒト」の場所、つまり「財産の所在」と「住所(生活の本拠)」で判定することになっています。
国外にある財産を報告させたとしても、その財産がそもそも相続税や贈与税の対象外というケースもありえます。

原則として、日本の相続税法では、国内・国外を問わず全世界にある財産の「すべて」に相続税・贈与税がかかります。
ただし、次のいずれかに該当すれば、国外にある財産には相続税・贈与税はかからないことになっています。

  • 亡くなった人(財産をあげる人)・財産をもらう人の両方が、5年を超えて日本に「住所」がないこと
  • 財産をもらう人が「日本国籍」を持たないこと。でも、日本に住所があったらダメ

※ 「住所」はもらう人・あげる人の両方、「国籍」はもらう人の側だけが判断のポイントに。

日本国籍ではない人に、日本以外の場所にある財産を渡すなら、日本の相続税・贈与税の対象外だということは、「日本に住んでいる父や祖父が、海外に住む日本の国籍を持たない子どもや孫に国外にある財産を渡す」とか「私がフランス人と結婚し、自ら愛する夫と同じ国籍に変え、日本人の自分の父がフランスに家を買ってくれる」なら、相続税や贈与税はかからないのです(後者は単なる妄想です)。

「住所」で判断する場合

ただし、「国籍」ではなく「住所」で判断する場合には、やや注意が必要です。

生活の本拠が国内なのか国外なのかについては、判断が微妙なケースもあるからです。
海外に持株会社を作り、その株式を子どもに贈与して贈与税の課税を逃れた事例が過去に問題になったこともあります。

また、海外に住む日本人、日本に住む外国人が、共に最近20年間で約1.7倍に増えている現状では、税金よりむしろ「相続が発生したときには、どの国の法律で相続を処理するか」の方が、大きな問題になることも。

日本人が亡くなれば、その人の相続は日本の法律で処理するのが原則です。
でも、その日本人が海外に不動産を持っていたときには、不動産がある国の法律で相続を処理しなければならないこともあるのです。

最近の新聞報道によれば、日本の国籍を持たない子どもや孫に国外にある財産を渡すときにも相続税や贈与税をかけようと、現在財務省では検討中だとのこと(※ 2013年4月1日以後の相続や贈与から、課税対象へと改正済)。どうやら税金がイヤなら国籍を変えればいい、という単純な問題ではなさそうです。

-相続税相談の現場から

関連記事

進む事業承継への環境整備

事業承継税制はこう変わる 平成25年度税制改正で事業承継税制(非上場株式に係る相続税・贈与税の納税猶予制度)の見直しが行われました。 事業承継税制とは、中小企業の後継者が現経営者から株式を承継する際に …

もらう人が決めるから、もめる「遺産分割協議」

「もめると分かっている」相続が多すぎる! 「相続財産は自宅とわずかばかりの金融資産。生命保険への加入もなし。相続人である子どもは複数いて、そのうちひとりが被相続人と同居中」――。こんな相続税の申告事案 …

生前贈与 契約書で証拠残す

孫名義の口座に毎年110万円ずつ振り込み、生前贈与しています。 無駄遣いを防ぐために本人には知らせていませんが、問題ありませんか? 誤解だらけの生前贈与 生前贈与についての誤解をよく耳にします。 「家 …

大型判『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』の第2版が発売されました

2024年11月13日に、大型判『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』の第2版が発売されました。 通常サイズのA5版は、2014年に初版を発行し今年で10年の節目を迎えました。 そして、とても多くの …

妻が夫の口座から自分の口座にお金を移したら「贈与」になる?

たとえば、夫から家計の管理を任されている妻がいたとします。 この妻が夫の口座から200万円を引き出し、自分の口座に移しても それだけではこのお金は妻のものにはなりません。 この場合は、たとえ妻名義の口 …

相続税相談の現場から
ブログ