「平成22年分の相続税の申告の状況について」が、2012年4月25日に国税庁から公表されました。震災の影響で申告期限が延長されていたこともあり、例年より約4ヶ月遅れです。
「平成22年分の相続税の申告の状況」からわかること
このデータからは、いろいろなことが想像できそうです。
まず、
(A) 亡くなった人 平成21年 約114万人→平成22年 約120万人(前年比 +4.8%)
(B) 相続税の申告書を提出した人 46,438人→49,733人(同 +7.1%)
と、亡くなった人よりも、相続税の対象者の増えかたの方が大きくなっています。
でも、相続税の基礎控除額が4割減るという改正は、まだ国会で審議中。これが対象者増加の理由ではありません。
では、前年と比較して、財産をたくさん持っている人ばかりが亡くなったのかというと、
(C) (B)の1人あたり課税価格 2億1,765万円→2億1,006万円(同 △3.5%)
(D) (B)の1人あたり相続税額 2,502万円→2,363万円(同 △5.5%)
と逆にこちらは減っているので、どうやらそうでもなさそうです。
申告された財産を種類別に見てみると、例年、全体の半分近くを占めている「土地」の割合が少し減っています。
平成22年の土地の路線価は、全国平均で約8%、東京圏では10%近くも前年比で下落していたので、これも1人あたりの課税価格や相続税額が減った理由のひとつかもしれません。
なぜ相続税がかかる人が増えたのでしょう?
とはいえ、基礎控除額には改正がなく、持っている財産の価値も下がっているのに、なぜ相続税がかかる人が増えたのでしょうか。
平成22年4月1日以降の相続から、居住用や事業用の土地の評価額を5割引や8割引にできる「小規模宅地等の特例」を適用するための要件が、とても厳しくなりました。
改正前は【亡くなった人判定】だけだったのですが、改正後は【亡くなった人判定+もらった人判定】になったのです。
亡くなった人が、その土地をどう使っていたかだけではなく、もらった人がどう使うかについても細かい要件を満たさないと、土地の評価額が一切減額されなくなりました。
公表されたデータだけでは、相続税のかかる人が増えた本当の理由は分かりません。でも現に、相続税の課税割合は4.1%から4.2%へと、ひそかにアップしているのです。
基礎控除額や死亡保険金の非課税枠の縮小は、今後の税制改正の行方次第なのですが、このような相続税の現状についても知っておく必要があるかもしれませんね。