相続税の連帯納付の義務がなければ、とことんもめても大丈夫?

相続税相談の現場から

先日、ある弁護士さんと税制改正の話になりました。

平成24年度の税制改正で「相続税の連帯保証人制度」が変わりました

今、話題になっている「消費税増税法案」、正式名称「社会保障の安定財源の確保等を図る・・・法律案(長いので中略)」は、実際には消費税だけではなく、所得税・相続税の増税も含むトリプル増税法案です。
この成立の見通しはまだ立たない一方で、あまり話題にならなかった平成24年度の税制改正は、既に可決・成立し、4月1日から施行済です。

相続税では「連帯納付の義務」=「相続税の連帯保証人制度」が変わりました

本来、自分が負担する相続税は、自分が相続した財産に応じた分だけ、です。
でも、同じ人から財産を相続した人同士は、相続税という名の借金の、いわば連帯保証人になっています。

自分の払うべき相続税を支払わず、税務署の督促にも応じない不届き者がいたときには、その人の相続税まで払う義務が生じます

連帯保証人にならなくていいケース

こんな不条理な制度が改正され、自分の相続税を期限までにキッチリ納めて5年たてば、もう他人の相続税の連帯保証人ではなくなることになりました。
また、相続税を期限までに納められず、分割払い(延納)している人の分は、最初から連帯保証人にならなくていいことになったのです。

そのため、弁護士さんからは

「それならなおさら、遺産分割でもめるなら”とことん”もめるべきですね。
福田先生は、10ヶ月以内に話し合いをまとめた方がいいと言われますが、
家族がいったんもめたら元どおりなんてありえない。
連帯納付の義務がなくなって、相続税の面からも相続人同士が一蓮托生では
なくなったのなら、弁護士に頼んでとことんやりあい、さっさと片付けたほうが
いいでしょう。」

と言われました。

相続税の連帯納付の義務がなければ、もめても大丈夫?

でも、連帯納付の義務はなくても、財産をもらう人同士、申告期限までに解決した方がいいことは、まだあります。
たとえば、亡くなった人が使っていた土地を8割引で相続できる「小規模宅地等の特例」は、事業用の土地の場合、10ヶ月以内に事業を引き継げるかがひとつのカギになるのです。
お医者様のご家庭で、実際に問題が生じたことがありました。

多額の弁護士報酬を支払った上、国に払う相続税まで増えてしまったとしたら、そもそも相続財産の全体額が減ってしまうことになります。
それって、とことん争ってもあまり意味がないのでは・・・。

-相続税相談の現場から

関連記事

相続対策には生命保険より不動産?(後編)

不動産を買うなら相続税のことも頭に入れておく 税メリットや安定収入の確保だけを目的として行えるほど、不動産投資は甘くありません。でも、不動産を買うなら相続税のことも考慮して買った方がよいケースがありま …

退職金話法、その前に(所得税法)

通達よりまず法律!役員退職給与の基礎のキソ 【法人税基本通達9-2-32 役員の分掌変更等の場合の退職給与】は、税理士も、また税理士ではなくても法人へ生命保険を提案されるみなさまなどにはなじみのある通 …

相続時精算課税の落とし穴

精算課税の落とし穴あれこれ 相続時精算課税(以下、精算課税)の落とし穴として考えられるものを挙げたところ、結構たくさんありました。そのいくつかをご説明します。 親より先に子が亡くなると損 親より先に子 …

妻が夫の口座から自分の口座にお金を移したら「贈与」になる?

たとえば、夫から家計の管理を任されている妻がいたとします。 この妻が夫の口座から200万円を引き出し、自分の口座に移しても それだけではこのお金は妻のものにはなりません。 この場合は、たとえ妻名義の口 …

遺産相続の基本ルールを知る

相続税のことも心配ですが、二世帯住宅に長男家族と暮らしているため、 遺産相続で長男と長女がもめないかも気がかりです。 遺産をスムーズに分けられないと、相続税の特例を使えず納税額が増えることがあります。 …