相続税の申告手続きは無事終えましたが、「税務調査」が来る可能性もあると聞き不安です。
何か準備しておくことはありますか?
税理士にとっては日常業務のひとつである「税務調査」ですが、
一般の方にとっては未知の世界ではないでしょうか。
普通の税務調査は「任意調査」
税務調査には2つの種類があります。
映画やドラマで描かれる「強制調査」は、裁判所の令状が必要で
悪質な脱税が疑われる場合に行われます。
一般的な税務調査は「任意調査」と呼ばれ、
事前に税務署から電話連絡があり、こちらの予定も考慮したうえで、
約2週間後を目途に故人の自宅などで行われます。
「何を聞かれるのか」「どう対応したらいいのか」などについては
事前に税理士からアドバイスを受けられますし、
調査当日には税理士が同席しますので、安心して下さい。
なお、「任意」調査という名前ですが、
法律上、納税者は調査を受ける義務があり、拒むと罰則が科せられます。
調査対象=金融資産の申告もれがあるケース
税務調査の対象に選ばれる確率は、相続税申告をした方の約1割ですが、
財産額の多い順ではありません。
調査対象に選ばれやすいのは、
「名義預金(名義は家族でも実質的な所有者が故人である預金)」など、
金融資産の申告もれが疑われる方です。
税務調査は、申告書を提出してから数か月後、
場合によっては1年以上たってから行われます。
その間に税務署は、故人の取引金融機関に「照会書」を送り、
故人や家族の取引記録を過去3年分取り寄せ、チェックします。
不自然なお金の動きが多かったり、無収入の人の口座に多額の資産があったりした場合は、
過去にさかのぼって口座を調べ、調査すべきかを検討します。
そのため、実際に調査を受けると8割超が申告もれを指摘され、
追加の相続税に加え、
利息にあたる延滞税や罰金にあたる過少申告加算税などを課されてしまうのです。
故人が保険料を負担し家族にかけていた生命保険も、申告もれの場合が多いようです。
不安な方は、申告書の提出後も再度確認しておきましょう。
後から申告もれが見つかっても
調査の連絡が来る前に自ら訂正すれば、過少申告加算税などは課されないからです。
申告書を提出する時に「書面添付制度」を利用しても似た効果があります。
詳しくは税理士に相談してみて下さい。
税務調査の1日
例えば、実際の税務調査は次のような形で進められます。
朝10時、調査官が来訪。
部屋に通しお茶を出し、まずは相続財産と関係のなさそうな(本当は大いに関係のある)
故人や家族に関する軽めの質問を受けます。
正午から1時間は昼休み。
調査官は昼食に出て、その間に相続人と税理士は午前中の質問を踏まえて打ち合わせを行います。
午後1時、調査が再開。
自宅の金庫、書斎の机、タンスの引き出しなどを確認され、
銀行に貸金庫があれば、銀行にも一緒に行きます。
通帳、権利書、日記、手帳などもチェックされ、書類はカメラで撮影されることもあります。
印鑑は紙に押し印影を取られ、午後4時頃、調査は終了します。
調査官が作成した書類への署名押印を求められることもありますが、
応じなくても大丈夫です。
自宅での調査は通常1日で終わり、
その後、調査官が指摘事項を税理士に伝え、税理士が反論するなどのやりとりをします。
従来は、最終的な結論が出るまでに約2、3か月かかりましたが、
最近はやや期間が短くなっています。