二拠点生活をする場合の住民税

相続税相談の現場から

二拠点生活をする場合、
住民税の「所得割」は、住民票を置いている市町村の方におさめます。

2か所に住まいがあっても、2か所におさめる必要はありません。

住民税は住民票をベースに判定される

原則として個人住民税は
1/1の時点で住民票を置いている市町村から課税されます。

道府県民税と市町村民税に分かれていますが、まとめて市町村におさめます。

前年の所得に対して、1年分が課税されるため
年の途中で引っ越しや出国をしても、税額や納付先は変わりません。

個人住民税は「所得割」と「均等割」の2種類に分かれていて

・所得に応じて負担する「所得割」の税率が10%(道府県民税4%、市町村民税6%)
・定額を負担する「均等割」が4,000円(道府県民税1,000円、市町村民税3,000円)

基本はこの合計額になります。

ただ、市町村の裁量で住民の負担を増やしている自治体も多く

所得割は、神奈川県と兵庫県豊岡市
均等割は、37府県、2市で超過課税が行われています。

総務省/超過課税の状況

住民票はメインの住まいの方に置く

といっても、それほど大きな差ではないため
住民税の損得で、住民票を置く場所を決める二拠点生活の方は少ないでしょう。

住民税の趣旨は
上下水道、ごみ処理、学校教育、公的施設といった
住民への行政サービスに必要な費用を、住民が分担するためのもの。

自分が長い時間をすごすメインの住まいに
住民票を置いて住民税をおさめる方が自然
です。

国民健康保険や国民年金、どこで投票するかの選挙人名簿への登録なども
住民票をベースに判断されます。

なお、その住まいが持ち家か・賃貸かは関係ありません。

地方の別荘が持ち家で、都会の住まいが賃貸でも
日常生活の主体が都会なら、都会の方に住民票を置くことになると思います。

ただし、両方の住まいが持ち家の場合、

住民税の「所得割」は1か所でしかかかりませんが、
定額を負担する住民税の「均等割」と固定資産税は、両方の市町村で課税されます。

自宅の税特例は、形式ではなく実態で判断

気をつけたいのが、自宅に関する税の特例を使いたいときです。

自宅は生きていくために必要不可欠な財産であるため、
税負担が重くならないよう、様々な特例が設けられています。

たとえば

所得税なら、住宅ローン控除、3000万円控除
贈与税なら、配偶者の贈与税額控除、住宅取得等資金の特例
相続税なら、小規模宅地等の特例

などです。

税務上、自宅とは生活の本拠であり、本拠は1か所だと考えられています。

そして、形式ではなく実態で判断するため、住民票がある=自宅とは考えません。

そのため、二拠点生活の方は
自宅の税の特例を使いたいという理由だけで
住民票を置く場所を決めるのはやめた方がいいでしょう。

住民票で、自宅がどこかを判断しないということは、たとえば

電気・ガス・水道・新聞など、公共料金の利用状況
郵便物の配達先
病院などの通院先
通勤定期券の区間

といった日常生活の実態から、生活の本拠であることを証明できれば
住民票を置いていない方の拠点に、自宅の税特例を使っても問題はありません。

-相続税相談の現場から

関連記事

デジタル遺言制度の検討が始まっています

デジタル遺言制度の検討が始まっています 日本経済新聞 2023年5月6日 「デジタル遺言」制度創設へ ネットで作成/押印・署名不要 改ざん防止、相続円滑に 一般的な遺言の方式には「自筆証書遺言」と「公 …

大型判『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』の第2版が発売されました

2024年11月13日に、大型判『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』の第2版が発売されました。 通常サイズのA5版は、2014年に初版を発行し今年で10年の節目を迎えました。 そして、とても多くの …

遺言書の内容と異なる分け方はできる?

前回のコラムでは、遺産分割協議がまとまらない理由や、長引いた際の問題点をご説明しました。 今回も引き続き、財産の分け方についてお話していきます。 遺言の指示通りに分けなくても構わない 実際の相続の場面 …

相続対策には生命保険より不動産?(後編)

不動産を買うなら相続税のことも頭に入れておく 税メリットや安定収入の確保だけを目的として行えるほど、不動産投資は甘くありません。でも、不動産を買うなら相続税のことも考慮して買った方がよいケースがありま …

財産をもらうはずの人が先に亡くなったら?

前回のコラムでは、親より先に子が亡くなり、さらに養子がいた場合、相続人や相続分、相続税の計算がやや複雑になるとお話しました。 でも、親子の間でこの世を去る順番が逆転することは、決してめずらしくありませ …