マンションの相続税評価の改正、国税庁から新通達が公表されました

相続税相談の現場から

国税庁、マンションの相続税評価について改正新通達を公表

10/6に国税庁は、マンションの相続税評価について、新しい通達を公表しました。

居住用の区分所有財産の評価について(法令解釈通達)

これにより、令和6年1月1日以後の相続や贈与は、この通達をもとに評価します。

なお、7/21~8/20までの1か月間、原案へのパブリックコメントが募集されていましたが
基本的な内容はほぼ原案通りで、大きな変更はありません。

改正の目的

そもそも、相続税や贈与税は、財産の「時価」に税率をかけて計算します。

この時価は、本来、「相続税評価額」とほぼ同じ額のはずですが

マンションは、他の財産や一戸建てと比べて
「時価」より「相続税評価額」が低すぎることが問題だとされていました。

そこで、通達を改正し

「時価(市場売買価格)」と現行の「相続税評価額」の差が大きすぎるマンションには
従来の評価方法による評価額に、新たに作られた「区分所有補正率」というものをかけ

両者の差を少なくしようということになりました。

ただこれにより、相続税の節税目的ではなく
単に自宅としてマンションに住んでいる方の相続への影響も大きくなりましたので、注意が必要です。

大まかな考え方

改正後は、従来の評価額に「区分所有補正率」をかけることで

【評価水準0.6未満】時価より相続税評価額が低すぎる(都心の新しいマンションなど)
→評価額を時価の6割まで引き上げ

【評価水準0.6以上1以下】時価より相続税評価額が低すぎでも高すぎでもない
→変更なし

【評価水準1超】相続税評価額が高すぎる(田舎の古いマンションなど)
→評価額を時価の6割まで引き下げ

となります。

つまり、①の【評価水準0.6未満】の方が、増税対象です。

そして、これを判定するための【評価水準】は、時価と相続税評価額の差がどの程度かを示すもので
「評価かい離率」をもとに求めます。

「評価かい離率」についてはこちらで解説済ですが、計算方法が難しく

マンションの相続税評価の見直し、通達案が公表されました

後日、国税庁から計算ツールが公表されるそうなので、今は自力で計算できなくても大丈夫です。

影響の大きそうな方は、対応策の検討を

ただ注意したいのは、都市部にマンションをお持ちの方です。

来年以降の相続や贈与は、新通達で評価することになり
税負担が大幅に増えることが見込まれるため

贈与税を払ってでも今年中に贈与を実行したいというご相談が増えています。

確かに、今年中の贈与なら新通達の適用はありません。

でも、富裕層が庶民にはできないような行為を
節税目的で行い、納税者間の公平に著しく反する場合は

いわゆる総則6項と呼ばれる規定を適用されて
従来のやり方での評価が否認される可能性はありますので、注意が必要です。

-相続税相談の現場から

関連記事

謎だらけの過大役員退職給与(後編)

前回に引き続き、「過大役員退職給与」について考えます。 「いくらなら不相当に高額か」については謎だらけ 役員退職給与が「不相当に高額」か否かを類似法人と比較するため、審判所等では主に「功績倍率法」「1 …

「相続弁護士」「相続税理士」「相続司法書士」― 最適な専門家を探すには?(前編)

どの専門家に何を頼めばいい? 「相続について相談したいけれど、どの専門家に何を依頼できるのか、そして、その専門家をどうやって探したらいいのか分からない」 お客様からそう言われることがあります。 「相続 …

土から芽が出ているところ

新NISAについて よくあるご質問(税金編)

新NISAについて、お客様からよく聞かれる税金の質問をまとめました。 被相続人のNISA口座を相続人が引き継げますか? NISA口座を開設していた方が亡くなった場合 NISA口座内の株式や投信などは、 …

事業承継を恐れず、好機を逃さず

事業承継対策の手法いろいろ 事業承継税制や小規模宅地等の特例以外にも、中小企業の事業承継対策に活用できる技はまだあります。 たとえば「金庫株」の制度を使えば、株式を発行した会社の分配可能額に余裕があれ …

生命保険、一定枠まで非課税

銀行で、相続対策にもなるからと、生命保険を勧められました。 どのようなメリットがあるのか、具体的に教えて下さい。 生命保険が相続対策になる理由 定期預金が満期を迎えた高齢者らが 銀行の窓口で終身保険( …