生活設計塾クルー発行のクルーレポートに隔月で記事を執筆しています

相続税相談の現場から

2024年11月より隔月で、生活設計塾クルー発行のクルーレポートに記事を執筆しています。

クルーレポートとは

クルーレポートとは、
㈱生活設計塾クルーさんが月4回(第1~第4土曜日)、有料で配信しているマネーレポートです。

クルーの有料会員さまや、レポートの購読者さまに加え
保険会社の契約者さまなどにもお読み頂いています。

私は外部執筆者として、主に税や相続をテーマに執筆する予定です。

「メンバー独自の、そして中立な視点でわかりやすく情報をお届けしていますので、
個人の方はもちろん、金融機関にお勤めの方やマネー情報を扱うマスコミ関係の方、
ファイナンシャルプランナーの方などにもお勧めできる充実した内容となっています」
※ ㈱生活設計塾クルーHPより引用

ご興味のある方は、ぜひ一度、お試しください。

※ご参考までに、初回の私の記事を転載します。

「相続税課税と税務調査の今を知る」(2024年11月23日配信)

今回から執筆メンバーに加わりました、税理士の福田真弓です。

これまで約25年間にわたり、主に相続や贈与といった個人の財産にかかわる税の専門家として活動してきました。実務家ならではの役立つ情報をお伝えできればと思います。よろしくお願いいたします。

データからみる相続税の現状

さて今回は、国税庁から毎年公表される統計年報やその他の相続税に関するデータをもとに、相続税課税と税務調査の現状をご紹介します。

2024年7月に公表された直近の統計年報には、前々年2022年に亡くなった方の全相続税申告のデータが掲載されています。

これらは過去の他人のデータではありますが、傾向の把握や分析はみなさまの財産管理や相続対策に役立ちます。内容を順にみていきましょう。

多くの指標が過去最高を更新

まず、2022年は「過去最高」が多かった年だといえます。

具体的には、相続税の対象になった被相続人(亡くなった人)の数、課税割合(亡くなった人全体に占める相続税が課税された人の割合)、課税価格の総額、相続税を納めた相続人の数、相続税の申告書を提出した相続人の数、などの指標が過去最高を更新しました。

つまり、相続税への備えが必要な人は増え続けているのが現状です。

金融資産の保有割合が増え納税資金に困る人は減っている

次に、申告された相続財産の内訳をみると、金額の多い順から「現金・預貯金」、「土地」、「有価証券」となっています。

この順位は長年土地が1位でしたが、近年は現金・預貯金の割合が増え続け、ついに2021年に現金・預貯金が土地を逆転した経緯があります。翌2022年もその傾向が進み、相続財産の半分以上を現金・預貯金と有価証券、つまり「金融資産」が占めています。

以前は相続税を現金一括で納めることが難しい場合は、財産そのもので納める「物納」や現金で分割払いする「延納」を選択するケースが、実務上はそれなりの頻度でありました。ただ、直近は物納の申請件数が20年前の100分の1以下に減っていることからも、納税資金に窮する方は減る傾向にあることが伺えます。

相続税のかかる人は全国的に増えている

そして相続税の課税割合を都道府県別にみると、高い順から東京都(18.7%)、愛知県(15.1%)、神奈川県(14.3%)と続き、大都市圏が高い傾向にあります。

ただこの割合は、大都市圏以外の多くの都道府県でも過去最高になっています。税理士的には「持ち家あるある」なのですが、自宅以外に財産と呼べるものはそれほどないのに、相続税の対象になってしまうご家庭は意外に多くあります。土地評価のもとになる「路線価」の全国平均も、2022年から2024年にかけては前年比で3年連続上昇しています。

地価上昇の背景にあるインバウンド客の増加や土地再開発の見込みは分かりませんが、今後も地価の推移には注意が必要です。

相続税の税務調査は2種類。「簡易な接触」が増えている

こういった情報に加えて国は、相続税の「税務調査」の概要も公表しています。

税務調査とは、適正で公平な課税を行うために、税務署や国税局が申告もれや計算誤りがないかを調べることです。税務署などの職員が自宅にやってくる「実地調査」と、郵送や電話で相続人に来署を促し申告内容を是正する「簡易な接触」の2種類があります。一方的に疑われているようでイヤなものですが、正直者がバカを見ないためには必要な制度です。

直近2023年12月に公表された2022年の相続税の調査件数は、実地調査が8,196件、簡易な接触が15,004件の合計23,200件でした。申告した人の7人に1人超、相続税を納めた人の5人に1人程度が対象に選ばれている計算になります。

実は、コロナ禍を機に実地調査は減った一方、簡易な接触やそれに伴う追徴税額は増え続けています。2015年に相続税の基礎控除額が引き下げられ申告件数が大幅に増えたこと、加えて、コロナ禍で高齢の相続人の自宅で行う対面の実地調査に制限が出たことなどから、効率的に行える簡易な接触への移行が進んでいるのです。

将来の相続を見据え家族で話し合いを

必ずしも財産額の多い方が調査対象に選ばれるわけではありませんが、近年は課税価格が2億円を超える申告が約2万件程度と、調査件数に近い水準になっています。そして実地調査では、例年9割弱という高い確率で申告もれが見つかり、その多くを金融資産が占めています。

年末年始は家族が集まり、住まいやお金の話をする機会が増えるかもしれません。こういった相続税の情報が、その際の参考になれば幸いです。

-相続税相談の現場から

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