新NISAについて よくあるご質問(税金編)

相続税相談の現場から

新NISAについて、お客様からよく聞かれる税金の質問をまとめました。

被相続人のNISA口座を相続人が引き継げますか?

NISA口座を開設していた方が亡くなった場合
NISA口座内の株式や投信などは、相続人が相続しますが

それらを被相続人のNISA口座から、相続人のNISA口座に移すことはできません。

なぜなら、自分のNISA口座には
「自分が新規に購入した」ものしか入れられない決まりがあり

相続や贈与でもらったものは入れられないからです。

なので、相続人は自分の特定口座などの課税口座で
被相続人のNISA口座内にある株式などを引継ぐことになりますが

このときに、被相続人のNISA口座と相続人の課税口座は
「同じ金融機関でないとダメ」という条件もあります。

なので、もし新NISAのスタートをきっかけに、口座を開こうという方は
家族で同じ証券会社にしておいた方が、あとあと楽だと思います。

NISA口座は相続税の節税になりますか?

相続税の節税にはなりません。

NISA口座は、配当や売却益にかかる「所得税」は非課税ですが
「相続税」の取り扱いは課税口座と同じだからです。

相続発生日の時価が相続税の課税対象になりますが

株式は、時価の変動を考慮し
相続発生日の終値と、相続月・その前月・その前々月の終値平均と比較し、一番低い価格を使います。

上場株式の評価
貸付信託・証券投資信託の評価
(国税庁タックスアンサー)

被相続人のNISA口座は相続人の所得税の節税になりますか?

節税になり得をすることも、逆に損をすることもあります。

なぜなら、相続人が売った株式などが
被相続人の特定口座にあったかNISA口座にあったかで、「取得価額」の考え方が変わるからです。

事例1

被相続人が60円で買った株を、相続人が90円で相続した後、100円で売ったとします。
売却益には、約20%の所得税などがかかります。

この株が、被相続人の
① 特定口座にあった:被相続人の取得価額を相続人が引継ぐ
② NISA口座にあった:引継がない。相続人が相続時の時価で取得したと考える
となり

① 売却価格100 – 取得価額60 = 売却益40 税8
② 売却価格100 – 取得価額90 = 売却益10 税2

と、NISA口座の方が所得税の節税になります。

①は取得価額を引継ぎ、②は引継がないからです。

事例2

被相続人が60円で買った株を、相続人が30円で相続した後、100円で売ったとします。

この場合
① 売却価格100 – 取得価額60 = 売却益40 税8 ※事例1と同じ
② 売却価格100 – 取得価額30 = 売却益70 税14

と、逆にNISA口座の方が所得税が増えてしまいます。

つまり、被相続人のNISA口座内にある値下がり株を相続すると
相続人の売却時に所得税で損をしますので、気をつけましょう。

 

-相続税相談の現場から

関連記事

相続対策には生命保険より不動産?(後編)

不動産を買うなら相続税のことも頭に入れておく 税メリットや安定収入の確保だけを目的として行えるほど、不動産投資は甘くありません。でも、不動産を買うなら相続税のことも考慮して買った方がよいケースがありま …

配偶者居住権 死ぬまで自宅に住める 2次相続時に節税のメリットも

令和2年4月1日以後の相続や、同日以後に作成する遺言から利用できるのが「配偶者居住権」の制度です。活用法や注意点を改めて確認しましょう。 配偶者居住権 導入の背景 夫の遺産の相続時、従来は法定相続分と …

本の写真

改訂版『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』発売

2024年6月3日に、改訂版『身近な人が亡くなった後の手続のすべて』が発売されました。 2014年に初版を発行し、今年で10年の節目を迎えます。 多くのみなさまに手に取っていただいたおかげで、増刷と改 …

贈与=相続税対策じゃないってホント?

精算課税での贈与に相続税上のメリットはない 生前贈与が相続税対策として優れている点は2つあり、1つ目は、贈与により相続税の対象となる財産の量が減るので、相続税を直接減らす効果があること、2つ目は将来、 …

株式会社・合同会社、どちらで作る?

個人事業の法人成りは、税務上の大きなテーマのひとつです。さらに「個人は増税・法人は減税」というここ数年のトレンドが、法人化の流れをより後押ししています。 個人に課される税金は、所得税・住民税の合計で最 …