令和6年分の路線価の動向

相続税相談の現場から

国税庁は、7月1日に令和6年分の路線価図等を公表しました。

全国的に上昇傾向です。

路線価について

国税庁/令和6年分 財産評価基準書路線価図・評価倍率表

今回、公表された令和6年分の路線価は
令和6年中に相続や贈与があった場合の、相続税や贈与税の計算に使います。

路線価図には
各道路に面している土地の、1㎡あたりの評価額が千円単位で示されています。

たとえば
「300」と表示されている道路に面した土地の評価額は、1㎡あたり300,000円となり、

実際の地積が100㎡なら、相続税・贈与税上、その土地の評価額は30,000,000円になります。

全体的な傾向は

景気が緩やかに回復していることもあり
令和6年分の路線価は、全国平均で2.3%、3年連続で上昇しています。

都道府県別でみると
上昇率が5%以上なのは、北海道、宮城、東京、福岡、沖縄の5都道府県でした。

また、税務署別でみると
最も上昇率が大きいのは、長野県の白馬村です。

これは、スキー場や別荘地といった
富裕層向けの観光地への投資が活発になっていることが理由です。

その次に、熊本県の菊陽町が続いています。

これは、台湾の世界的半導体メーカー、台湾積体電路製造(TSMC)の進出による
不動産需要の高まりによるものです。

一方、最も下落率が大きいのは、北海道の江差町です。

北海道は、札幌市近郊や外国人観光客の多いリゾート地は地価が上昇しているものの
全体的には下落していて、二極化が進んでいます。

「どう備えるか」にも活用できます

令和6年中に相続や贈与がない方にとっても
将来の相続にどう備えるかに、路線価図は役立ちます。

路線価は、土地売買の目安となる公示地価の80%程度に設定されているため

「保有している土地が、大体いくらで売れそうなのか」が大まかに判断でき、

売ってキャッシュ化する土地、活用して収益性を高める土地、守って残す土地、のように
保有している土地を色分けし、運用方法を検討するのに役立ちます。

また、自宅の土地など、今後も土地を利用し続けるつもりの方は
路線価が上がり続けている=将来の相続税が増え続けている、ことになるため

土地の評価額を、80%または50%減額できる
小規模宅地等の特例が使えるかは、事前に確認しておきたいところです。

居住用宅地の場合は、
亡くなった方の配偶者か同居の親族、
そのどちらもいないときのみ、別居していて持ち家のない親族が適用対象者です。

親の相続で子どもが要件を満たさなければ
遺言を書き相続人ではない孫(孫は親族)に残すなど、別の方法を探す必要がでてきます。

-相続税相談の現場から

関連記事

「自宅の土地の8割引特例」の勘違い

最近は、相続税の特集を組めば雑誌の売れ行きがよいそうで、小規模宅地等の特例(いわゆる、自宅の土地の8割引特例)に関する記事も増えました。 でも、税理士の立場から見ると、他の相続税の記事に比べて間違いが …

NISAの文字の木

新NISAについて よくあるご質問(基本編)

新NISAについて、投資初心者のお客様からよく聞かれる初歩的な質問をまとめました。 銀行と証券会社、NISAはどちらで開設した方がいいですか? NISA口座は「1人1口座」なので、どの金融機関で口座を …

「相続弁護士」「相続税理士」「相続司法書士」― 最適な専門家を探すには?(後編)

前回に引き続き、「相続の専門家」についてです。 状況により選ぶべき「相続」の専門家は違う 【司法書士】 不動産登記や商業登記などの「登記」の専門家です。相続に関しては、被相続人から相続人へ、土地や建物 …

本当に必要な相続税対策とは

平成25年度の税制改正で、相続税は増税され贈与税は緩和されました。 「相続税対策が必要なのかな」と、漠然とした不安を感じる方も増えるでしょう。 そこで、新たに相続税の対象となる財産額が5000万円~1 …

相続時精算課税、使ってみても大丈夫?

対象者が広がった相続時精算課税制度を活用すべき? 平成25年度の税制改正で、相続時精算課税制度が今までより使いやすくなります。 平成27年1月1日以後の贈与から、贈与者の年齢要件が60才以上(現行は6 …