相続税の申告期限
相続税の申告期限は「死後10か月以内」といわれることが多いですが
正しくは相続税法に
「相続の開始があったことを知った日の翌日から10月以内」と定められています。
「相続の開始」とは「亡くなったこと」です。
そして、相続税の申告義務のある方は
通常、亡くなった方に一番近い立場の配偶者や子どものことが多いので
「亡くなった日」と「亡くなったことを知った日」は、同じになることが大半です。
そのため、ほとんどの場合
申告期限は「亡くなった日の翌日から10か月以内」と考えて問題ありません。
亡くなった日=知った日にならないケース
ただし、実務上は
「亡くなった日=亡くなったことを知った日」にならないケースがあります。
典型例が以下の2つです。
相続人が亡くなったことを知らなかった
文字通り、相続人が亡くなった事実を知らなかったケースです。
亡くなった方が孤独死や、失踪しているケースなどに加え
私のお客様では
夫が亡くなり、後妻と前妻の子(離婚後、交流なし)が相続人になる場合で
夫を看取った後妻が、四十九日を過ぎてから、
前妻の子に夫の死を、手紙で知らせてきたことがありました。
この場合、後妻の申告期限は死後10か月以内ですが
前妻の子の申告期限は「手紙が届いた日=知った日」の翌日から10か月以内になります。
相続人が認知症や精神障がい者
また、亡くなったことを「知った」とは、
単に亡くなったという「事実」を知るだけではなく
自分が相続人として財産を相続する権利があるという、
相続の意味まで分かる必要があると考えられています。
そのため、相続人が認知症や精神障がい者など、相続の意味を正しく理解できない場合は
「成年後見人が選任された日(成年後見人の選任の裁判確定日)」が「知った日」にあたり
その翌日から10か月以内が、相続税の申告期限になります。
これに該当するケースは、実務上、非常に多いです。
相続税法基本通達27-4(7) 「相続の開始があったことを知った日」の意義
以上の考え方は、相続放棄や限定承認(死後3か月以内)も同じですので、
知っておくとよいでしょう。